2025年読書記録9冊目(2月-2冊目)。
書籍紹介
基本情報
あらすじ

この違和感の真相を見破れるか? 一気読み&再読必至のダークミステリ!
僕は自分から何かを奪う人間を許さない――。
かつてないドライブ感と衝撃。予測不能のダークミステリ!
19歳の坂木錠也(さかき じょうや)は、ある雑誌の追跡潜入調査を手伝っている。
危険な仕事ばかりだが、生まれつき恐怖という感情が欠如した錠也にとっては天職のようなものだ。
天涯孤独の身の上で、顔も知らぬ母から託されたのは、謎めいた銅製のキーただ1つ。
ある日、児童養護施設時代の友達が錠也の出生の秘密を彼に教える。
それは衝動的な殺人の連鎖を引き起こして……。
二度読み必至のノンストップ・ミステリ! /KADOKAWA「道尾秀介本人がサイコパスなのではないか」
という疑念が生じるほどに、真に迫った表現がされている。
――中野信子(脳科学者)【解説より】
http://michioshusuke.com/custom104.html
読書記録
関連記録
メモ
先日、年少の息子を通わせている幼稚園でお遊戯会が開かれた。
学校の体育館を小型化したような遊戯室の小高いステージの上で、息子を含む多くの子供たちが目を輝かせながら無邪気に歌い踊る姿を見ながら、私はふと考えた。
「どんな偉人や犯罪者にも、今この目の前にいる子供たちのような純粋無垢な時代があったのだろうか」と。
本作を読んだとき、私はそのときのことを思い出していた。
そして、「もしかしたら、『サイコパス』と呼ばれる人々には、そもそもそんな時代が訪れなかったのかもしれない」と思った。それほど、この作品における幼年期から青年期までにかけてのサイコパスの心理描写は生々しいものだった。
本作は、「恐怖を感じることがなく、人を傷付けることに抵抗がない」、いわゆる「サイコパス」の一人称視点で物語が進んでいく。
解説にも書かれているとおり、その特性を示す表現が真に迫っていて、作者である道尾氏自身がサイコパスなのではないかと疑ってしまうほどだった。
特に私が戦慄したのが、主人公・坂木錠也が中学時代に起こしたケンカの場面における次の文章である。
ケンカは力と力の勝負だと思い込んでいる人が多いけど、間違っている。実際の勝敗は、ためらいなく相手を傷つけられるかどうかの一点にかかっている。
このような発想をしたことはこれまでなかったが、まさにその「ためらい」こそが人間の理性であり、その欠如こそがサイコパスを象徴しているものだと改めて気付かされる文章であった。
物語は、過去の回想シーンを挟みつつ、めまぐるしく展開していく。
そして、まともな人間には思えなかった錠也のことが、終盤にはまだまともに見えてきてしまうほどに、狂った世界を描き出していく。
スプラッタとまではいかないものの、目を背けたくなるような残酷な描写も見られるため、そういった表現が苦手な人は少し注意が必要かもしれない。
さて、これで、今年読んだ道尾氏の作品は5作目。期待を裏切られることなく、今回も楽しませていただいた。
次は何を読もうかと楽しみにしている自分は、すでにファンとなってしまったと言ってもいいだろう。
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