2025年読書記録14冊目(3月-5冊目)。
書籍紹介
基本情報
あらすじ
第7回本格ミステリ大賞小説部門受賞作
人は、死んだらどうなるの?――いなくなって、それだけなの――。
その会話から三年後、凰介の母は病死した。父と二人だけの生活が始まって数日後、幼馴染みの母親が自殺したのを皮切りに、次々と不幸が……。父とのささやかな幸せを願う小学五年生の少年が、苦悩の果てに辿り着いた驚愕の真実とは? いま最も注目される俊英が放つ、巧緻に描かれた傑作! 本格ミステリ大賞受賞作。 /東京創元社強烈な衝撃の連続に、ぼくは心地よくノックアウトされました――板倉俊之(インパルス)
http://michioshusuke.com/custom17.html
読書記録
関連記録
メモ
今年に入ってから道尾氏の作品に耽読しているが、本書はその中でも『向日葵の咲かない夏』に次ぐ作家初期の第4作目となる。
本書を選んだ理由はよく覚えていないが、「第7回本格ミステリ大賞小説部門受賞作」ということで「これは読んでおかねば」と思った記憶が微かにある。
随所に散りばめられた伏線と、それによって読者をミスリードさせる仕掛けが実に巧妙だった。
私もまんまと騙されてしまい、それまで頭の中で描いていた物語の全体像が、終盤に鮮やかに覆された。
それは、登場人物に抱いていた善悪のイメージが完全に逆転してしまうものであり、物語の真実が明らかになっていく終盤は驚きの連続だった。
本作で描かれる事件の真実(犯人の所業)は胸糞が悪くなるものであるが、終章の後に挿入されているエピローグが読後の余韻を明るいものにしている。
もしエピローグが描かれていなかったとしても、読者にその後の展開についての想像の余地を与える形で作品としては成立している。
しかし、その場合、物語はあまりにも悲しい結末を想像させるものとなっていただろう。
私は、エピローグを読んで心が救われた気持ちになった。
ハッピーエンドといっていいものかどうかはわからないが、少なくとも残された者たちにとっては最良の結末だったのではないかと思う。
ちなみに余談だが、本作には(物語にはほとんど関わらないが)「隈島」という毛深い手を持つ刑事が登場する。
確か、『いけない』シリーズにも同じように毛深い「隈島」という刑事が出てきたが、それは本作で登場した隈島を意識して書かれたものだったのだろうか、と少し気になった。
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