2025年読書記録5冊目(1月-5冊目)。
書籍紹介
基本情報
あらすじ
江戸川乱歩の作品をその発表順に収録した全集の第1巻。
収録されている作品は下記のとおり。
- 二銭銅貨
- 一枚の切符
- 恐ろしき錯誤
- 二癈人
- 双生児
- D坂の殺人事件
- 心理試験
- 黒手組
- 赤い部屋
- 日記帳
- 算盤が恋を語る話
- 幽霊
- 盗難
- 白昼夢
- 指環
- 夢遊病者の死
- 百面相役者
- 屋根裏の散歩者
- 一人二役
- 疑惑
- 人間椅子
- 接吻
読書記録
関連記録
メモ
昨年末から再燃した乱歩熱により短編集を3冊図書館から借りて読んだことを以前の読書記録に記した。
その後、乱歩熱は冷めることなく、むしろさらに熱を帯び、ついには「すべての作品を読んでみたい」とまで思うに至った。
そんなわけで、ついには全集に手を伸ばすこととなり、図書館から借りてきたのが本書である。
全30巻あるらしいが、果たしてすべて読み終えるのはいつになるだろうか。
仮に1ヵ月に2冊読んだとしても1年以上かかる計算だ。のんびりと自分のペースで読み進めていきたい。
本書には乱歩がデビューしてから数年間、いわば作家としての最初期に当たる時代に発表された22作品が収められている。
これまでに読んだ短編集に収録されていた作品も多く、それだけこの時代の作品に傑作が多かったのだと感じさせられた。
各作品に乱歩自身の解説が付記されており、執筆当時の乱歩自身の境遇や心境、時代背景がうかがえて、それもまた興味深いものとなっている。
本書に収録された作品、かつ、これまで未読であったものの中で印象的だった作品を挙げるとすると、『恐ろしき錯誤』だろうか。
乱歩の自作解説によると、乱歩自身はこの作品を「独りよがり」で「小説家として未熟であることを暴露したような」ものだと評しているようだ。
だが、私にはそれほど悪い作品だとは思えない。
作品全体を通じて流れる、主人公である北川氏の狂気性と、その裏にある悲しき事情。そして、『恐ろしき錯誤』というタイトル回収にもなっている、乱歩得意のどんでん返しが効いた非情な結末。
確かに、読後の爽快感はなく、ただただ虚しさが残る悲しい作品ではあると思う。
ただ、だからこそ私はその虚しさの中に、北川氏の悲哀を見出し、強く惹き付けられるものを感じるのである。
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