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【読書記録】いけないⅡ

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2025年読書記録12冊目(3月-3冊目)。

Table of Contents

書籍紹介

基本情報

タイトル:いけないⅡ
著者:道尾秀介
出版社:株式会社文藝春秋
形式:ハードカバー

あらすじ

著:道尾 秀介
¥1,700 (2025/03/08 14:41時点 | Amazon調べ)

大きな話題を読んだ”体験型ミステリー”第2弾。

第一章「明神の滝に祈ってはいけない」
桃花はひとり明神の滝に向かっていた。一年前に忽然と姿を消した姉・緋里花のSNS裏アカウントを、昨晩見つけたためだ。失踪する直前の投稿を見た桃花には、あの日、大切にしていた「てりべあ先生」を連れて姉が明神の滝に願い事をしに行ったとしか思えない。手がかりを求めて向かった観瀑台で桃花が出合ったのは、滝(、)の(、)伝説(、、)を知る人物だった。

第二章「首なし男を助けてはいけない」
夏祭りの日、少年は二人の仲間を連れて大好きな伯父さんを訪ねる。今夜、親たちに内緒で行う肝試し、その言い出しっぺであるタニユウに「どっきり」を仕掛けるため、伯父さんに協力してもらうのだ。伯父さんは三十年近くも自室にひきこもって、奇妙な「首吊り人形」を作っている。その人形を借りて、タニユウの作り話に出てきたバケモノを出現させようというのだ。

第三章「その映像を調べてはいけない」
「昨夜……息子を殺しまして」。年老いた容疑者の自白によれば、息子の暴力に耐えかねて相手を刺し殺し、遺体を橋の上から川に流したという。だが、その遺体がどこにも見つからない。必死で捜索をつづける隈島刑事は、やがてある「決定的な映像」へとたどり着く。彼は先輩刑事とともに映像を分析しはじめ——しかし、それが刑事たちの運命を大きく変えていく。

終 章「祈りの声を繋いではいけない」
――すべての謎がつながっていく。前作を凌ぐ、驚愕のラストが待つ!/文藝春秋

http://michioshusuke.com/custom107.html

読書記録

関連記録

読了日:2025年3月7日(金)
入手元:図書館からの貸出

メモ

前作『いけない』と同じく「ラスト1ページに描かれている写真(画像)で新しい事実が明らかになる」という仕掛けが施された作品。
「自分の大切なものと引き換えに願いを叶える神がいる」と語られる「明神の滝」。この名所を擁する箕氷(みごおり)市を舞台に描かれる、全4章の物語。
前作を読んでいるとより感情移入できる登場人物は出てくるが、続編というわけではないので、前作が未読でも問題はない。

前作の場合は、最後の写真の持つ意味がはっきりと明かされることはなく、その真相に気付かずとも(ぼんやりとした違和感がありつつも)読み進められるような構成になっていた。
しかし、本作では、各章ラスト1ページが持つ意味がその次の章で割とあっさり明かされる。
私は各章を読み終えるたび、最後の写真が持つ意味(真相は何か)をじっくり考え、自分なりに納得してから次の章へ進んでいた。しかし、その真相が次章であっさりと明かされてしまうため、やや拍子抜けしてしまった。

そういう意味では、真相に気付いたときの驚きという点では、前作の方が勝っていたように思う。
ただ、第1章に仕掛けられたトリックには完全に騙され、真相に気付いたときにはそれまでの物語が一変する衝撃を受けた。

終章ラスト1ページの意味はもちろん作中で明かされないので、そこが読後の余韻として残る。
前作のラストは、その先どうなるのかを読めないような何とも言えぬ物悲しさを誘うものであった。
今作に関しては、最後の1ページの写真から、作中では描かれなかったその後の物語が目に見えるように想像できた。
しかし、それが関係者にとって少しでも救われる結末だったと言えるのかは私にはわからなかった。
そういう意味では今作も、その余韻には切ない読後感が残った。

これは余談だが、本作では親の目線で感情移入してしまって、何度も胸が締め付けられるような苦しさを感じる場面があった。
もし、息子が同じような事件に巻き込まれたら。もし、息子が加害者になったら。もし、息子に同じ仕打ちを受けたら……。考えただけで気持ちが沈んでしまう。

さて、最後はネタバレありで、各章ラスト1ページが持つ意味について記録しておく。

これ以降には本作のネタバレを含みます。
未読の方は読まないことをオススメします。

第1章
ラスト1ページに描かれているもの:避難小屋入り口ドアとその両脇に並んだ雪だるまと干支だるま
それが意味するもの:桃花が大槻の避難小屋を訪れた際の描写で、桃花の目線から干支だるまが「雪ネズミ」と表現されていることから、桃花と大槻が会ったのは子年だったということがわかる。
しかし、最後の写真に写った干支だるまは「丑」の形をしている。
そして、この写真は(六)の最後で大槻が撮影したものと考えられる。

ここから、この章は時系列順で記されているように見せながら、実際には「桃花目線でのパート(奇数節)は子年、大槻目線でのパート(偶数節)は丑年となっており、1年のズレがある」ことがわかる。
つまり、大槻のパートで語られる「1年前から行方不明の女子高生」、「冷凍庫に押し込まれている死体」は緋里花ではなく桃花のことであった。

第2章
ラスト1ページに描かれているもの:開け放たれた伯父の部屋の窓とそこに干されたつなぎ、そしてその手前にある首つり人形のような近影
それが意味するもの:伯父の部屋にはいつも首吊り人形があったが、その手足に指はなく「ただ布が丸く縫い合わされているだけ」という描写がある。しかし、写真に写った首つり人形のように見えるそれには、しっかりと5本の指が存在する。
つまり、首を吊っているのは人形ではなく、伯父だった。

第3章
ラスト1ページに描かれているもの:一面に広がる秋桜畑と「益子町コスモス祭り」と書かれたのぼりが映ったビデオ映像の一場面
それが意味するもの:孝史は「大好きだった花の下で」「一輪きりの花の下で」眠りつづける、という描写がある。
また、孝史が「体が埋まっちゃう」ほどの何かを「いちばん好き」と話している声を千木が回想している描写も存在する。
秋桜は人が隠れてしまえるほど背が高くなる植物であることや、「益子町コスモス祭り」に行った日の様子がビデオ撮影されていたことがわかることから、前述の会話が交わされたのが「益子町コスモス祭り」に行ったときであり、「いちばん好き」という言葉の対象が秋桜であることが示唆されている。
そして、千木の家の今にある座卓の上には「一輪挿しに生けられた秋桜」があることがわかる描写も存在する。
つまり、孝史は夜目ヶ森ではなく、千木家の居間の軒下に埋められていた。

第4章
ラスト1ページに描かれているもの:床頭台の上に乗った白いスマートフォンと、そこに映る桃花の携帯電話番号からの着信を知らせる画面
それが意味するもの:写真に写るスマートフォンは、智恵子が持っていた緋里花のスマートフォン。
これは、火災現場から智恵子とともに病院に運ばれ、その後、充電されて電源が入れられたと考えられる。
そして、そこに緋里花の両親が桃花の番号からかけた電話が着信している。
恐らくは緋里花の20歳の誕生日を祝いたいという思いからかけられたものだったのであろう。

このスマートフォンから電波が発信されたことをきっかけとして、隈島は智恵子の口から事件の真相を知ることになると考えられる。
そしてそれは「俺に事件を解決させてください」という隈島の願いが叶うことを意味する。
願いが叶ったその先に隈島が抱く思いは、果たしてどのようなものなのだろうか。

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