2025年読書記録3冊目(1月-3冊目)。
書籍紹介
基本情報
あらすじ
朝霞、新座、志木ーー。家庭を持ってもこのへんに住む元女子たち。元男子の青砥も、このへんで育ち、働き、老いぼれていく連中のひとりである。須藤とは、病院の売店で再会した。中学時代にコクって振られた、芯の太い元女子だ。50年生きてきた男と女には、置いた家族や過去もあり、危うくて静かな世界が縷々と流れるーー。
心のすき間を埋めるような感情のうねりを、求めあう激情を、生きる哀しみを、圧倒的な筆致で描く、大人の恋愛小説。
https://special.kobunsha.com/asakura/
読書記録
関連記録
メモ
2024年11月某日。
その日、私は夕食後の散歩中に、最寄り駅前のロータリーでロケを行う撮影隊を目にする。
そこには、堺雅人さんの姿があった。
ドラマなのか映画なのか、一体何の撮影をやっているのか気になったけれど、調べても詳細はつかめなかった。
得られたのは、「撮影はその日以外に近隣の公園でも行われていた」、また「井川遥さんがいた」といった断片的な情報だけだった。
それから数週間が経ち、興味も薄れかけていた頃、ネットの記事で答えを知ることになった。
主演が堺雅人さんと井川遥さんの2人であること、そしてロケが朝霞市内で行われたということから、あの日見たのはこの映画の撮影だったということがわかった。
そして同時に、この映画が今まさに自分たちが暮らしている街を舞台に描かれた小説を原作としていることも知った。
さて、前置きが非常に冗長になってしまったが、これが今回この作品を読んだきっかけである。
ちなみに、この本は妻が図書館から借りてきたのだが、この映画化の発表を受けて興味を持った人が多いらしく、現在10人以上が予約中で貸出順番待ち状態になっている。
ジャンルは恋愛小説。
50歳の男女、青砥健将(あおとけんしょう)と須藤葉子(すどうようこ)の中学時代以来の再会と恋愛が描かれている。
こういうきっかけでもなければ、私はこのジャンルを手に取ることはなかっただろう。
この作品では、冒頭に2人の物語の結末が記されている。
そのため、読者は先に結末を知った上で、そこに向かって展開する2人の物語を再会の瞬間から遡って読み進める形となる。
最初に読んだときは、この冒頭の展開に対していまひとつ理解が及ばず、物語の時系列を把握するのに少し時間を要した。
物語はこの青砥と須藤の2人を中心に進んでいく。
派手さはない。そこにあるのは、生々しい日常だけだ。
時折、実在の地名や店名、商品名、テレビ番組などの描写が挿し込まれ、それがまた現実感を増している。
そもそも私が恋愛小説を読むこと自体ほぼないのに加えて、この作品では主人公が自分より一回りも上の年代ということもあって、青砥の行動に深く感情移入することができたかというと、必ずしもそうではなかった。
ただ、最初から結末がわかっているが故に、物語の後半から最終盤に向かっていく展開においては、青砥の心情を思うとキュッと胸が締め付けられるような思いがした。
須藤のアパートの場所は明示されていないが、道中の描写でおおよその場所が浮かんだ。
そこは、私が買い物や外食に行く際によく通る道沿いだ。
きっと、これからはその道を通る度に道沿いのアパートを見上げてしまうだろう。
この物語を映像化すると、それはどのような世界になるのだろうか。
鑑賞後には、どのような感情が残るのだろうか。
自分の暮らす街が舞台であることに加え、この映画そのものへの純粋な興味が湧いてきた。
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